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国循サザン事件―0.1%の真実―

国循官製談合事件の容疑者として起訴された桑田成規さんを支援します

『国循サザン事件』第4回公判を終えて(4)

当事者桑田成規さん自著 国循サザン事件

今回も,前回示した国循官製談合事件(『国循サザン事件』)第4回公判で示した弁護側反対尋問の要点の6・7について,西田氏の証言を踏まえて概説します(桑田)。

この記事は,マスコミでは報道されない公判の様子をお伝えすることによって,より多くの方にこの『冤罪事件』の真実を知ってもらうことを目的として書いているものです。私自身が公判の法廷の場で見聞きしたことを元に,自らの認識と意見のみを書いておりますので,記載内容には一定のバイアスがあること,そして私の弁護人の見解や弁護団の弁護方針とは無関係であることをご承知おきください。

6.入札1(2012年3月19日開札,一般競争入札)において,契約係が,当時の受託業者(NEC)の技術員が9名であったにもかかわらず,当該入札の予定価格を12名で算出した経緯

この「実際は9名で稼動しているのに12名で予定価格を算出した」という異常な事実については,すでに八田氏が初公判を傍聴した直後に見事に看破し,ご自身のブログに綴っておられます。*1

この点につき,弁護側は,2011年3月の入札直後の段階で,契約係がNECから技術者9名からなる体制図を受け取っていたこと,そしてその電子ファイルが契約係の共有フォルダに保管されていたことを示す客観的な資料を提示し,西田氏に対して,「現行人員が12名であることを前提として予定価格を積算した理由」を質しました。

西田氏は,「自分は担当ではないので,自分自身で実際に何名かを確認したわけではない」「当時の部下であった中島係長から聞いた」旨の証言をしました。 

 

7.入札1・入札2において,契約係が,予定価格が80万SDR(1億円程度)を超える政府調達であったにもかかわらず,WTO(世界貿易機関)協定のルールで定められている意見招請手続きをとらなかった経緯

SDRとは邦貨換算額のことであり,国際的な調達で用いられる貨幣基準(単位)です。 2年に一回改訂がなされ,

  • 平成22・23年度の邦貨換算額:
    10万SDR:1,500万円,80万SDR:1億2,000万円
  • 平成24・25年度邦貨換算額:
    10万SDR:1,200万円,80万SDR:1億円

と決められていました。予定価格が10万SDRを超える調達は政府調達といって,WTO政府調達協定のルールに従わなければなりません。

この政府調達協定のルールを具体的に定めるため,内閣官房内に設置されたアクション・プログラム実行推進委員会において,さまざまな政府調達に関する措置が示されています。また,政府内の省庁申し合わせなどによりルールが整備されています。

とくに,コンピュータや電気通信機器については,

などのルールが明確化されています。

ここでポイントとなるのは,「予定価格が80万SDR(平成23年度は1億2000万以上)を超える調達については,意見招請手続を行わなければならい」とルールによって義務づけられていることです。

意見招請とは,いったん完成した仕様書案を,一定期間公開し,それに対する意見を求める手続きです。これによって,入札参加予定業者は,仕様書の内容に偏りがないか,実現困難な要求事項がないか,特定の業者に有利になっていないかを確認することができます。

この手続きが義務化されているのは,国際的な調達ルールにおいて,これが入札の「公平・公正」を担保するための重要な手続きであることを示しています。

これをふまえて弁護側は,西田氏に対して,上記のルールを提示し,予定価格が80万SDRを超えていた入札1および入札2において,なぜ意見招請が行われなかったのか,を質しました。

これに対し,西田氏は「ミスであった」「気がつかなかった」と証言しました。

この証言の真偽はさておき,事実として,入札の公正を確保するための重要な手続きが実施されなかったということが明らかになりました。

なお,この件につき,西田氏は,第2回公判で,検察官の「なぜ意見招請をしなかったのですか」との問いに対し,「総合評価落札方式をとらなかったからです」と証言していました。実は「総合評価落札方式をとるかどうか」に関わらず「意見招請をする」ことはできるので,彼は誤った認識を元に証言しています。重要なことは,この質問を受けた第2回公判の時点で,彼は「自分のミス」についてまったく触れなかったということです。

彼は,第4回公判では「このミスについては,すでに捜査段階で何度も検察に話しています」と証言しました。つまり,公判の始まる前から,彼は「自分のミスにより意見招請を行わなかった」ことを認識していたにもかかわらず,第2回公判では検察官からの質問に答える形で,「総合評価落札方式を取らなかったから意見招請をしなかった」と平然と証言していたのです。

さらに,捜査段階で認めている「ミス」であるにもかかわらず,彼の供述調書にこの「ミス」について触れた部分はまったくありません。

以上のことから,この一連の彼の言動は,検察との事前打ち合わせにより仕組まれたものであったと考えざるをえません。

また,政府調達において「80万SDR」の基準が設けられたのは,すでに20年近くも前のことです。よって,「最近できたルールなので,現場に周知されていなかった」ということはまったくありえません。そして,そのルールもきわめてシンプルで,要するに,予定価格の大小比較だけで決まる,きわめて手続きです。政府調達の仕事をしている人であれば,真っ先に覚えるルールといっても過言でないはずです。なぜ,このような「基本中の基本」の業務について,調達業務を長く務めたベテランの西田氏――国循の調達責任者を務めるような人物―ーが「ミスをする」などということが起こりうるのでしょうか。

この点については,調達業務に詳しい方のご意見をお伺いしたいところです。

今回はここまでとします。

 

国循官製談合事件(国循サザン事件)についてはこちらから

 

*1:八田氏ブログ:

(前略)仕様書に書かれていた保守・運用管理の人員は12人、それなのに桑田さんがダンテック社に「漏洩した」NECによる現行保守・運用管理の人員は9人。

12人と9人。最初は何気に聞き流していたその二つの数字が、何やら意味ありげに感じられました。

検察がなぜ保守・運用管理の人員にこだわったかと言えば、一人一人の人件費は業界の相場があるので、「掛ける人数」で入札価格が推察できるという主張でした。業者の入札に際し、仕様書に12人の人員と書かれていれば、業者はそのつもりで入札価格を決めるはずです。もし検察が主張するように、人員の数が入札価格の重要な決定ファクターであるならば、後発業者の入札価格が、現行9人で保守・運用管理をしているNECの入札価格に勝てるはずがありません。(後略)