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国循サザン事件―0.1%の真実―

国循官製談合事件の容疑者として起訴された桑田成規さんを支援します

『国循サザン事件』第4回公判を終えて(2)

第2回〜第5回の公判は、元国循調達室専門職の西田氏が検察側証人として出廷して進められました。

今回は,前回示した国循官製談合事件(『国循サザン事件』)第4回公判における弁護側反対尋問の要点のうち,1と2について,西田氏の証言を踏まえて概説します(桑田)。

この記事は,マスコミでは報道されない公判の様子をお伝えすることによって,より多くの方にこの『冤罪事件』の真実を知ってもらうことを目的として書いているものです。私自身が公判の法廷の場で見聞きしたことを元に,自らの認識と意見のみを書いておりますので,記載内容には一定のバイアスがあること,そして私の弁護人の見解や弁護団の弁護方針とは無関係であることをご承知おきください。

前回記事はこちら。

 1.入札2(2013年1月30日開札,一般競争入札)において,国循は,当該入札において最低価格落札者となった業者と契約せず,その結果,入札が不調となった経緯

この入札は,ダンテックが初めて落札した入札(入札1)の次年度に行われた入札(入札2)です。入札2ではダンテックは価格競争に競り負け,システムスクエアが最低価格落札者となりました。国循では,入札の落札者とすぐに契約をするのではなく,一定期間の交渉を経て契約するルールがあります。結果として,国循とシステムスクエアの交渉は双方合意に至らず,入札は不調となりました。そこで,国循はダンテックとの現契約(2012年4月~2013年3月)を3ヶ月延長し,2013年6月に入札のやり直しをすることになりました(入札3)。

検察は,システムスクエアが国循と契約に至らなかった原因は,この交渉を私(桑田)が主導し,国循がシステムスクエアと契約しないように仕向けたからだ,と主張しています。

これに対し,弁護側は,そのような事実はなく,正当な手続きを経て決定したものだと主張しています。

反対尋問は,この経緯について,西田氏の認識を質すものでした。結論から言えば,彼の今回の証言は,弁護側の認識と相違ありませんでした。

  • システムスクエアの落札価格が52.7%と予定価格の60%を下回っていたため,国循のルールに沿って履行能力の審査を開始した。
  • システムスクエアに入札価格の根拠となる内訳を求めたところ,入札金額との大幅な差異があり,その差異についてシステムスクエアから明確な説明がなかった。
  • 国循が求めた技術資料の提示が所定の期日までになかった。この資料は,システムスクエアが所定の期日までに提出する旨同意したものであった。
  • 履行能力審査は,山本総務部長,桑田情報統括部長,西田調達企画専門職,中島契約係長の4者で行われ,交渉打ち切りについて4者で合意した。
  • その後行われた契約審査委員会でこの判断結果について審議され,最終的にシステムスクエアとの契約を打ち切ることが決定した。

以上について,弁護側は,契約審査委員会の議事録や,システムスクエアとの交渉時の議事録といった客観的資料を提示しながら西田氏に確認をしました。この資料から「桑田がシステムスクエアとの交渉を主導した」と読み取れる記述は一切ありませんでした

2.本事件以外の過去の複数の入札において,西田氏が,当該入札に関する仕様書案,機能比較表,機種選定小委員会報告書を特定の入札予定業者(1社)から直接メールで受け取っていたこと。そして,当該入札において,その業者が落札率100%で落札をしていたことの経緯

第2回,第3回公判において,西田氏は,検察の「入札への参加を予定している業者に,仕様書の作成を依頼することはあるのか」との問いに対し,「ありません」と答えていました。また,検察の「そのような事態が発覚すれば、どのようするのか」との問いに対し,「それが事実であれば契約審査委員会に諮り、入札の中止などの対応をする」と答えていました。

今回の公判では,過去の入札案件(9件)において,西田氏自身が,入札参加予定業者から仕様書案を直接受け取っていたことを示す客観的資料を弁護側が提示しました。さらに,仕様書だけでなく,機能比較表機種選定小委員会報告書までもが,直接,入札参加予定業者から西田氏に送付されていました。

まず,機種選定小委員会報告書について説明します。医療機器などの専門性の高い物品について,特定のメーカーの製品を指定して入札を行う場合に,「どの製品を買うか」について審議するために「機種選定小委員会」が開催され,その報告書が契約審査委員会に付されて審議されます。つまり,この報告書は「なぜ●●社の●●●という医療機器を購入するのか」ということについて国循内部で議論された結果の報告書です。報告書の結論は「●●社の●●●という製品が最も優れている(あるいは最も適している)」という感じで締めくくられています。

つぎに,機能比較表について説明します。機能比較表は,仕様書に書かれた主要な項目について,複数の製品を比較した結果を表にまとめたもので,機種選定小委員会報告書に添付されるものです。当然ですが,「機種選定小委員会」で選定された機器が「最も優れている」ということになっているのが普通です。そうでなければ,その製品を選定した理由がなくなるから,あたりまえですね。サンプルを以下に示します。

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このサンプルでは,A社製品が最も仕様書に適していることになります。この場合,かならず機種選定小委員会報告書」では,A社製品が選定された,という締めくくりになっています。

すぐにおわかりと思いますが,「なぜA社製品が選ばれたのか?」というプロセスにおいて,特定の業者が恣意的に評価基準を設定することができれば,「A社が優れている(または適している)」という結果を導き出すことは簡単にできます。

機能比較において,A社製品が他の製品に比べて有利な項目だけ評価基準に取り上げればよいのですから。

評価基準は仕様書に基づくものですから,その仕様書そのものの作成についても業者の関与が疑われる(業者から直接仕様書が送られてきていた)今回の西田氏のケースでは,業者側で「国循がどの製品を選ぶか」をすべてコントロールできることになります。いわゆる「出来レース」です。

このような入札の資料は,当然,国循内部で作成すべきものです。そのすべてが業者から,直接,国循の調達責任者に送られてきたことは,相当な異常事態なのです。

この事実を突きつけられて,西田氏は,「自分は専門的なことがわからないので,仕様書の作成にあたり業者に技術援助を求めたものであり問題ない」と釈明しました。また,機能比較書についても,「機能を比較した並べただけのものであり,とくにどれが優れているか示すものではない」と釈明しました。

仕様書作成に関して,関連する業者から製品に関する情報提供を受けるなどの支援を得ることは当然ありうることだと思います。過去の公判で,西田氏は,一般論といいながらも,検察の誘導に沿って入札参加予定業者に,仕様書の作成を依頼することはない」と証言してしまいました。今回の彼の証言により,調達責任者の実務としてこのような行為が行われていることが明らかになり,「一般論」をそのまま国循の入札手続きに当てはめることはできない,ということが示されたことになります。

しかし,仕様書作成に対する支援は別として,機能比較書や機種選定に関する報告書の作成にまで業者に関与させるとなると,話はまったく違います。もし彼がその「業者の関与」に直接的/能動的に関わっていない(つまり,本当に何も知らずに受け取っただけ)のであれば,それを知った時点で,まず調達責任者として「入札の公正を害する行為があったことを疑う」べきであり,以前,彼が証言したとおり「契約審査委員会に諮って」しかるべき沙汰を待つ必要があったはずです。もし,彼が直接的に関与したのであれば,その行為そのものが「入札の公正を害する行為」であることは明らかです。

今回の尋問をもって,彼が以前行った

  • 入札参加予定業者に,仕様書の作成を依頼することはない
  • それが事実であれば契約審査委員会に諮り、入札の中止などの対応をする

との証言は,完全に信頼性が損なわれたというべきでしょう。

なお,上記9件の入札の結果,すべて西田氏に資料を送付した業者が落札しました。落札率はすべてについてほぼ100%(入札の予定価格と落札価格がほぼ同じ)でした。入札参加業者は予定価格を知らされずに入札に参加します。それなのに,なぜその業者は予定価格とほぼ同じ価格で落札できたのでしょうか。答えは明らかです。

入札に求められる公正性が阻害され,競争原理がまったく働かなかったから

です。しかも,本来,入札の公正を守るべき立場にある調達責任者がこのことを看過していたのですから,入札のルールもなにもあったものではありません。このような「無法地帯」において,発注部署(現場)にだけ「仕様書作成の過程に業者を関与させてはならない」と厳しいルールを課し,現場の責任者のみを刑事罰に問おうとするのは異常です。

このようなことが平然とまかりとおるのが,今の日本の司法です。

どれだけ不利な立場で私が公判で争わなければならないか,おわかりいただければと思います。

今回はここまでとします。

 

国循官製談合事件(国循サザン事件)についてはこちらから